女子大生会計士の事件簿/山田真哉

 

さおだけ屋はなぜ潰れないのか??身近な疑問からはじめる会計学? (光文社新書)の作者が書いたライトノベル小説。女子大生が公認会計士に勤めているという設定で、主人公はその女子大生についていくちょっと頼りない男性新卒社員。公認会計士って何の仕事しているんだろう?という人にとって参考になる1冊。

「銀行に残高を発送するのは、会社口座の実在性・正確性を確かめるという目的が主だけど、網羅性という目的もあるのよ」

「網羅性??」

「つまり、会社が持っている口座を全て調べ上げるという意味よ。もしかしたら、私たちが知らない口座もあるかもしれないじゃない。だから<口座番号>をあえて書かずに送って、銀行にある全ての口座を洗い出してもらうのよ」

 萌さんはそう言うと、会議室から出て行こうとした。

公認会計士の権限というのは、どれぐらいあるのだろうと思っており、銀行への残高照会もどのようにしていたのか興味があっただけに勉強になった。

「―私はそんな低次元の話をしているのではない。もし修正した決算を発表したらどうなるかぐらい君にもわかるだろう」

「今回の決算発表は当期だけの話では済まなくて、これまでの財務諸表も<嘘だった>と修正しなきゃならないから、新聞とかにも大々的に取り上げられるでしょうね。そうなれば市場の評価はガタ落ち、株価は急落、信用は失墜、下手をすれば倒産するかもしれないわね」(P.181) 

 公認会計士が社会でどのような役割を果たして、具体的にどういう仕事をしているのか知るのに、非常に有益な1冊だった。文学的価値は残念ながら無いので、忘れてしまったからと再読することはあるかもしれないが、手元に置いておくほどではない。あくまで公認会計士というものを知るための1冊として読みたい。